待てなかった私が気づいたこと
子どもが沈黙しているとき、私はよく不安になっていました。
「分かっていないのかな?」「私の説明が悪かった?」
そんなふうに考えて、つい追加のヒントを言ってしまうこともありました。
でも、その沈黙は“何も起きていない時間”ではなかったんです。
子どもが頭の中でゆっくり考えを組み立てている、とても大切な時間でした。
大人が急がずに待つことで、子どもの言葉が静かに育っていくのだと、
少しずつ気づくようになりました。
子どもは“止まっているようで”考えている
鉛筆をくるくる回しながら、静かに考えている子がいます。
視線が宙にふわっと浮いて、どこか遠くを見ているような子もいます。
以前の私は、その姿を見るたびに
「理解できていないのかもしれない」「もう一度説明した方がいいかな」
と不安になっていました。
すぐにノートに書き始める子が“分かっている子”で、
考えるために手が止まる子は“迷っている子”のように見えていたからです。
でも、そうではありませんでした。
鉛筆を回しているその数秒のあいだも、
視線が宙に浮いているその時間も、
子どもたちは自分のペースでゆっくりと思考を組み立てていたのです。
そのことに気づいてから、私は
「今は動かないこと=考えていないこと」ではないと分かり、
子どもを信じて待つ時間を大切にするようになりました。
子どもの思考を育てる “Wait Time” という考え方
Edutopia の記事「Extending the Silence」では、
教師が質問をしたあとにどれだけ“待つか” が、
子どもの学びに大きく影響することが紹介されています。
記事の中では、1970年代から続く研究の中で
「質問後に3秒以上の沈黙を設けることで、学びに良い変化が起きる」
とされていることが解説されています。
たとえば、
- 子どもの発言が増える
- 答えを説明する量と質が高まる
- 思考がより深まる
といった効果が報告されています。
一方で、教師が実際に待っている平均時間は 0.9秒 とも紹介されています。
つまり、多くの場面で「考える時間」が十分に確保されていない可能性があるということです。
この記事が伝えているのは、
沈黙は“空白”ではなく、子どもが答えを組み立てている大切なプロセスだということ。
大人が急いでヒントを与えなくても、
子どもはその静けさの中で自分なりの答えを探しはじめます。
🔗 参考にした記事
Edutopia「Extending the Silence」
日常の中で「待つ」を取り入れるためにできること
では、私たちはどんな場面で “待つ” を取り入れられるのでしょうか。
家庭でも学校でも、子どもが手を止めたり、考えるような表情を見せる瞬間があります。
たとえば、宿題で手が止まったときや、問題を前にして黙ってしまうとき。
以前の私は「困っているのかな?」と思い、すぐにヒントを伝えたくなっていました。
でも、子どもたちはその静かな時間の中で、
自分のペースでゆっくり考えを組み立てていることがあります。
だからこそ、いきなり答えを伝えるのではなく、
“少しだけ待つ” という選択がとても大切になります。
たとえば、こんな工夫ができます。
- 子どもが黙って考えているときは、10秒だけ見守ってみる
- 「わからない?」とすぐ聞かずに、「どう思う?」と返してみる
- ヒントを出す前に、子どもが何を見て、何を考えているかを観察する
- 答えよりも「考えたプロセス」を大切にして、聞いてあげる
すぐに手助けすることは悪いことではありません。
でも、沈黙の中で自分の考えを見つける経験は、子どもにとって大きな力になります。
私たち大人が少しだけ待つことで、
子ども自身が「できた」という小さな成功を積み重ねることができるのです。
おわりに ― 静けさの中にあるもの
子どもが黙っている時間は、ときに不安を呼びます。
「わからないのかな」「助けたほうがいいかな」と、
つい声をかけたくなることもあります。
けれど、その静けさの中には、
子どもが自分なりの答えを探している大切なプロセスが隠れています。
すぐに助けなくても大丈夫。
私たち大人が少しだけ待つことで、
子どもは自分の力で考え、言葉を見つけていくことができます。
沈黙は、学びが静かに動き出すサイン。
その合図を見逃さずに、そっと見守る時間を大切にしていきたいと思います。

コメント