元公立校の教員として、
子どもたちが自分の言葉で「考えはじめる瞬間」を見たときに、
学びの表情が変わることを何度も感じてきました。
私たちは、つい「正しい答え」を見つけることに一生懸命になってしまうことがあります。
学校でも、家庭でも、仕事でも、“正解を当てること” がゴールになりやすいからです。
もちろん、知識を身につけることはとても大切です。
でも、海外の学校では学びの始まり方がすこし違います。
授業のはじまりに先生が言うのは、
“What do you think?”(あなたはどう思う?)
という、たった一つの問い。
Edutopia の「Using Inquiry to Support Deeper Learning」では、
学びは「問い」から深まっていくと紹介されています。
https://www.edutopia.org/article/using-inquiry-support-deeper-learning/
ここで大切にされているのは、
「正しい答え」ではなく、
**“考えるプロセスそのもの”**です。
■ 問いがあると、学びはひらいていく
問いがあると、子どもたちは自分の言葉で考え始めます。
- 「どうしてそう思ったんだろう?」
- 「他にどんな見方があるかな?」
- 「もう少し深く考えてみたい」
この思考の動きこそが、
学びを「受け取るもの」から「つくるもの」へ変えていく時間です。
カナダの Inquiry-Based Learning の資料でも、
問いは 「学びの入口」 だと説明されています。
■ すぐに答えなくていい。「考えている時間」を信じる
問いを投げかけても、
すぐに答えが返ってこないことの方が多いはずです。
でも、その沈黙は「何も起きていない」のではなく
思考が静かに育っている時間。
Edutopia では、この静かな時間を
“Wait Time(待つ時間)” と呼んでいます。
あわてず、急かさず、
すこしだけ待つことで、子どもは
「自分の言葉を探そう」としはじめます。
■ 日本の日常に取り入れる、小さな一歩
大きな工夫は必要ありません。
今日からできるのは、ほんの小さな余白です。
家庭なら
- 「どう思った?」を、そっと添えてみる
- 答えが出なくても
「考えてくれてありがとう」 と返す
教室なら
- 発言後に 3秒待つ
- 自分の考えを言う子に
「そう思ったんだね」 と一度受けとめる
考える時間は、安心からはじまります。
■ おわりに:問いは、ひらくためにある
「これが正しい」という答えを見つけるよりも、
「私はどう感じた?」「なぜそう思った?」と考えてみることは、
とても豊かな時間です。
もし今日、子どもと話す場面があったら、
こころのどこかに、そっと問いを置いてみてください。
「もし一つだけ問いを置くとしたら、どの瞬間にしますか?」
その問いは、
子どもの中にあるまだ言葉になっていない考えを、
静かにひらいていくはずです。🌱

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